自動車が好きな人は、
"1G"という言葉を聞いたことがあると思います。
「G」は重力加速度を表す記号で、地球の重力加速度が「1G」です。
そして、力を表す単位はN(ニュートン)ですが、数式では
力(N)=質量(kg)×加速度(m/s2)
と現わされるように、加速度が2倍になれば、物体にかかる力も2倍になる、という関係を確認できます。
つまり、Gが2倍「2G」となったときは、私たちの体にかかる力が通常の2倍になる、ということを意味しています。
本日は、「G」に関する話しをご紹介します。
衝突安全ボディは、「衝突したときの衝撃を吸収してくれるボディ」という説明を聞きますが、なぜボディが衝撃を吸収すると乗員の衝撃の緩和に役立つのか?という関係が分かりにくいと思います。
そこで、時速50kmで走行している自動車が停止するときにかかるGを計算してみると、
・通常のブレーキング時(5秒で停止と仮定):0.28G
・壁に衝突して0.15秒で停止すると仮定したとき:9.44G
となります。
つまり、時速50kmで走行している自動車が壁に衝突して0.15秒で停止したと仮定すると、「重力の9.44倍」の衝撃を体に受けることが分かります。
人間は、約7Gの力を受けると
「体の力を抜くと意識が飛ぶ」と言われていますので、人によっては時速50kmの衝突事故でも意識を失うことがあることになります。
ここで、衝突安全ボディは、ボディがつぶれることによって制動距離が長くなり、結果として停止するまでの時間が長くなるという効果があります。
仮に、停止するまでの時間が0.01秒長くなり、0.16秒で停止したと仮定すると
乗員にかかるGは「8.85G」
にまで下がります。
重力の9.44倍の加速度を体に受けるはずだったものが、8.85倍にまで下げることができれば、当然、乗員の生存率も高くなると見込めます。
歴史上、"もっとも大きな重力に耐えた人間"としてギネスブックに登録されているのは
「デビッド・パーレイ」という元F1レーサーです。
1977年の第10戦・イギリスGPの予備予選のときに大クラッシュをしてしまった人ですが、そのときに受けた加速度は
179.8G
です。
航空機事故による衝撃が100G以上と言われていますので、本当に奇跡的に助かったと言えるものです。
しかし、訓練を受けていない私たちが耐えられるのは、通常、
4~5G
であると言われています。
ジェットコースターに乗ると「お腹が浮く感覚」を受けますが、その状態のときが
およそ3G
です。
さらに、限界を超えて6G~7Gになると、目の毛細血管に血液が流れなくなり、
景色がモノクロになる
と言われていますし、8G~9Gになると
目を開けることができず、呼吸困難になる
とされています。
このように、耐えることができるGの限界を考えてみると、交通事故の衝撃は思っている以上に大きなものであることが分かると思います。
衝突安全ボディの説明では、速度を固定して考えていましたが、ここでは、速度が大きくなったときにGがどのように変化するかを見てみます。
衝突するまでの時間を「0.15秒」と仮定し、衝突前の速度を50km~100kmまで10km単位で変化させたものが、上のグラフになります。
上のグラフを見て分かりますが、速度に比例して衝突時に受けるGが大きくなっていることが分かります。
つまり、衝突安全ボディではない自動車でも、速度を少し落として走行することで衝突時のGを下げることができることになります。
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Wikipedia [デビッド・パーレイ]
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%A4
ke!san ※加速度の計算をすることができるカシオのサイトです。
http://keisan.casio.jp/exec/system/1161228700
近畿大学生物理工学部 [衝突の瞬間、あなたの身体は ~衝突時に作用する力~]
http://www.waka.kindai.ac.jp/tea/shibue/2006ScienceCafe.pdf
motorsportretro.com [David Purley]
http://www.motorsportretro.com/2012/01/david-purley/
Wikipedia [衝突安全ボディ]
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%9D%E7%AA%81%E5%AE%89%E5%85%A8%E3%83%9C%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC
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Posted at 2013/09/21 01:01:27