FT-86コンセプトのVDC／VSCは走りを優先したロジックが

FT-86コンセプトから生まれたトヨタ86とスバルBRZの全車（トヨタ86RCには未設定かもしれません）に標準装備されるVDC（スバル：Vehicle Dynamics Control）／VSC（トヨタ：Vehicle Stability Control）は、走りを追求するモデルらしい設定のデバイスとなっています。

このデバイスは日本の自動車保険会社などで「横滑り防止装置」などと翻案されていますが、制御の仕方次第でクルマの特性が大きく変わってきます。

基本的にドライブしているクルマがスピンなどに陥って制御不能にならないようにアシストする装置（デバイス）ですが、制御の方向は加速時の制御、つまり車輪に動力を伝えている動力そのもののコントロールと、減速時の制御、つまりブレーキングのコントロール、そして加えて、慣性でクルマが滑り出さないような制御まで行なう非常に複雑なシステムです。

しかも、そのコントロールは４輪別々に行っています（ただし、FT86は後輪駆動なので、加速制御は後２輪だけです）。

ただし、このVDCなりVSCなりが介入しすぎると非常につまらなくて遅いクルマになってしまう可能性があります。

つまり、自分の意志でドリフトに持ち込むことができないクルマになってしまうのです。

そこで、このFT-86に装備したVDC／VSCはノーマルモード（デバイスが完全作動）から５段階の効き目を設定しています。

最終的にはすべての機能をOFFにできて、サーキット走行やジムカーナにも対応できます。

サーキットなどのイベント会場まではVDC／VSCを完全作動させて一般道を安全・快適に自走します。

FT-86のVDC／VSCのモードで優れているのはスポーツモードで、「リアから滑り出して、安全な４輪ドリフトまで許容するが、絶対にスピンまでには至らせない」モードがあることです。

これはポルシェが搭載する同様のデバイスPSM (Porsche Stability Management)に近い作動領域を示すもので、このモードで搭載しているVDC／VSCが作動したら、それはあなたのドライビングミスをデバイスが救ってくれたという状況を示すものなのです。

すなわち、このデバイスが無かったら“事故ってた”ことになるわけです。

サーキットなどで練習する際に有効なモードですね。